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第6回 どうなる?省エネ基準義務化

更新日:2018/7/5

2020年、省エネ基準(への適合)が義務化されることは多くの方がご存知かと思います。
既に大規模な建築物は昨年から基準への適合、行政への届出が義務化されており、2020年には、普段みなさんが作っているような、小規模な住宅も義務化の対象となって、すべての住宅・建築物が省エネ基準に適合することが求められるようになります。
では、住宅の「省エネ基準義務化」が、具体的にどのような形になるのか、皆様はご存知でしょうか。実はまだ具体的な内容は決まっていないのです。むしろ2年後の義務化に向け、雲行きが怪しくなってきたという見方が強くなっています。

今年3月末、省エネ基準の適合率向上の課題になっている事項を整理するために検討を行ってきた国土交通省の住宅・エネルギー消費性能の実態等に関する研究会がとりまとめを策定しました。このとりまとめから、まずは住宅の省エネ性能の現状を見てみましょう。

この図は、事業者規模別の適合率ですが、平成27年度時点で、小規模(300㎡未満)戸建住宅の省エネ基準適合率は53%。一次エネルギー基準よりも外皮基準のほうが、適合率が低い傾向があるようです。また「年間着工戸数が4戸未満」の中小工務店がつくっている住宅の適合率は39%で、工務店がつくる住宅の適合率は相対的に低いのが現状です。一方、BEI※が0.7の誘導基準への適合率は27%。省エネ基準に適合している住宅の大半は誘導基準にも適合しており「二極化が見られる状況」になっていました。

※BEI=設計上の一次エネルギー消費量が、基準値に対し何パーセントかを示す値。H28省エネ基準に適合すると1.0

なぜ住宅は省エネ基準の適合率は低いのか、その理由として挙がったのは次の3点です。

①設計・施行に携わる事業者の間で省エネに関する技術について十分に習熟していないものが少なくないこと
②建築主等に省エネ性能向上の必要性等への理解が十分に浸透していないこと
③省エネ関連の投の費用対効果が低く、建築主等の感じるメリットが比較的小さいこと

この3点のうち、①はみなさんの努力を期待するとして、問題なのは②と③ではないかと思います。特に外皮(断熱)性能は、省エネ性や快適性の向上、居住者の健康増進に寄与する一方、かかるコストも上昇します。大・中規模に比べ、小規模な戸建住宅は省エネ基準に適合させるためのコストが圧倒的に高く(大規模住宅の約4倍)、回収期間も長いとの試算結果もあり、光熱費や健康といったメリットを知らない人にとっては、単なるデメリットにしかならないといっても過言ではないでしょう。

以前のコラムにも記述しましたが、まずはプロであるみなさんが、コストをかけた分享受できるメリットがあることを伝えていくことが必要なのではないでしょうか。

2020年に、全ての住宅・建築物で省エネ基準への適合を義務化すること自体は、2014年に閣議決定されており、義務化が先送りされる可能性は高くないと見て良いでしょう。ただし、繰り返しになりますがその内容はまだ不明で、一説に「届出」の義務化に留まるのではないかとも言われています。
とはいえ、大手ハウスメーカーはもちろん、中小工務店も省エネ基準、もしくはそれ以上の性能を標準としているところは少なくありません。とりまとめでも、今後の方向性として「ZEHなどより高性能なものの更なる推進」が示されており、省エネ基準以上の高性能な住まいづくりはひとつの潮流になっていくでしょう。仮に義務化されなくても、省エネ基準レベルの性能を提供できることは、工務店の最低限の条件になると思います。

寄稿:A(住宅ジャーナリスト)

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