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住まいの本質:第4話「日本の山・木材の現状①」

更新日:2020/10/21

前回のコラムでは、当機構が採択を受けている「地域型住宅グリーン化事業」(国土交通省)に触れました。長期優良住宅の普及を促す上で紹介しましたが、事業名にある〝グリーン〟について、「どういう意味ですか?」と聞かれることがあります。

グリーンとはもちろん、木材のこと。この事業は第3話のコラムで説明した通り、工務店のほか、木材流通などの関連事業者をグループの構成員とした上で、地域における木造住宅の生産体制を強化することを目標の1つに掲げています。

※考えてみれば世界中のあらゆる産業の中で、建設・建築業ほど木材(自然の植物)を使用する業種はないかもしれません。この業界に身を置く私たちは、地球環境の一部を利用して仕事をさせてもらっているのです。そのことに感謝して仕事をしつつ、自然が持続的に守られるよう取り組む責務があります。

そこで今回は、木材を生み出す日本の山の現状についてお話ししたいと思います。

◆木材自給率、約45年で100%→19%に

日本における森林の面積が、どれほどかご存じですか?
答えは約2500万ha。国土(3780万ha)の3分の2に当たる数字です。「日本は山の国」といっても決して大げさではありません。

建築資材として利用する木材は、人工林から主に産出されます。人工林の面積は約1000万haで、森林面積の約41%。樹種別ではスギ(444万ha、約44%)が最も多く、ヒノキ(260万ha、約25%)、カラマツ(98万ha、約10%)と続きます。

日本では戦後、人工林の計画的な植樹が本格化しました。
その結果、人工林に蓄積された森林資源の体積は年々増加。1966年に5.6億㎥だったのが、2017年には33.1億㎥と約50年で6倍近く増えています。

一方、木材の国内自給率は長年低迷してきました。
1955年に100%を誇っていたのが、2002年には18.8%にまで落ち込みました。特に、1964年に木材の輸入自由化が解禁された辺りから急落しています。価格の安い輸入材に押される形で、国産材の需要がしぼんでしまったことを物語っています。

2018年時点における自給率は36.6%。回復傾向にありますが、長期的な人口減少局面にある中で住宅着工数の減少に歯止めが掛からず、したがって木材需要の大幅な伸びも見込みづらいと言われています。

しかし私は別の観点から、建築資材としての日本の木材に希望を見出しています。いま、戦後に計画植樹された木々たちの間で、ある兆候が生まれているのです。

◆〝若い木〟が支えた集成材ブーム

過去における人工林の林齢(森林の年齢)別面積の推移によると、1970年代から90年代前半にかけて、林齢「6~30年」の木の面積が人工林の大半を占める状況が続きました。ピークだった1985年には、人工林の総面積1000万haの7割強を占めています。この「6~30年」の木というのは、言わば育ち切っていない若い木。そのため、多くが集成材として建築現場で使われました。

木材を品質や用途により分類する際に使われる通称に「A・B・C材」がありますが、主にB材に分類されます。集成材とは、伐採した木を細かく切り分けた上で乾燥させ、接着剤でつなぎ合わせて強度を高めた人工の木材のことです。現在も、多くの工務店やハウスメーカーに選ばれています。
言い方を変えると、林齢の若い大量の木材が、20年以上にわたる集成材の一大ブームを下支えしてきたということです。

◆古民家クラスの家が〝新築〟できる

「6~30年」の若い木が人工林に占める割合は、80年代中頃をピークに徐々に縮小し始めました。代わりに、その倍以上の年数を経た「31~60年」の木の割合がどんどん拡大していきます。2006年時点では「6~30年」の木が約240万haだったのに対して、「31~60年」の木が約700万ha。直近にかけてその差は更に拡大しています。

そして最も注目すべきが、更に林齢を重ねた「61~100年」の木。この割合も、徐々に伸びてきています。2018年時点では「31~60年」の木の4分の1ほどですが、2020年度以降は加速度的に比率を高め、2030年頃には人工林の総面積の過半数を占めると予測されています。

私がなぜ、「61~100年」の木に注目するのかご説明しましょう。「61~100年」と数字だけ聞くと想像しづらいかもしれませんが、植樹されてから60年以上も経つと、それはもう幹の太い素晴らしい木に育っています。


強度が十分にあり、切り刻んで集成材に加工する必要がなく、伐採・乾燥後に無垢材としてそのまま使えます。「A材」に分類されるものです。古民家と称される昔からの住宅では、柱や梁として太く立派な木材がよく現しになっています。「61~100年」の木といえば、ちょうどそのイメージ。昔の家づくりでは、その位か、またはそれ以上の林齢の木材を使うのが当たり前だったのでしょう。
つまり「61年~100年」の木が山からたくさん取れ始めると、古民家のような立派な家をたくさん、現代に新築できるのです。

そうなれば、日本の山は〝宝の山〟です。
ただし、それはいきなり出現するわけではありません。

◆〝宝の山〟生み出すのは人の手

人工林とは文字通り、人工的に植樹した森林。植樹後も人の手を入れ、「植える→育てる→収穫する」という循環サイクルを回す必要があります。具体的には、植えた木に日光が当たるよう雑草木や灌木を取り払う「下刈り」、成長に応じて一部の木を伐採し、立木密度を調整する「間伐」などの作業により山全体を育て、木々の収穫のタイミングを待ちます。

ところがこの循環サイクルが、日本の多くの山でうまく回っていない現状があるようです。なぜでしょうか?

日本の山の所有形態は、非常に細かいのが特徴。保有面積10ha未満の山林所有者が全体の約9割を占めます。
家族経営など小規模・零細な所有者が多いということですが、こうした所有者が間伐などの山の管理を個別に行うのは効率的とは言えません。そのため、山林の管理・経営に必ずしも意欲的でない所有者が多いのが現実のようです。
また前述したように、日本の木材自給率は長く低迷していました。日本の木が使われなくなっていたということです。
使われなければ、木々を育てて伐採するインセンティブがますます働きません。その結果、下刈りや間伐がなされずに荒廃していく山が増えていきました。

更に現在、日本の山々では「所有者不明」という難題も立ちはだかっています。
所有者の世代交代が進み、山林の所在する場所に居住していない所有者(不在村者)が増えた結果、所有者の特定が難しい山が多数存在しているのです。
保有されている森林面積のうち、不在村者の割合が24%に上るというデータもあります(2011年)。
所有者の分からない山は、当然ながら放置され、荒れ放題になってしまいます。

◆川下事業者・消費者は何をすべき? 〝合法木材〟がキーワード

事態の打開のため、国が様々な施策を講じています。
林道・作業道の整備、高性能林業機械を組み合わせた作業システムの普及・定着に向けた支援、ICT(情報通信技術)を活用した森林資源調査・生産管理の導入支援―――などです。直近の2年間でも、重要な法律が立て続けに制定・改正されました。森林経営管理法と、国有林野管理経営法です。

次回はこの2法についてお話しすると共に、川下の事業者に当たる工務店や建設会社、そして一般消費者はどのようなスタンスで木材に関わればいいのか、私の考えをお伝えしたいと思います。

一般社団法人建設業総合支援機構
本橋秀之

過去の記事
第1話「豊かに暮らせる家を造ろう
第2話「日本の住宅の現状
第3話「長期優良住宅が住宅建築の標準に

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